RPA(Robotic Process Automation)と生成AIを組み合わせた業務自動化とは、定型的な画面操作・データ処理をRPAが担い、文章の理解・生成・判断支援を生成AIが担う役割分担により、単独では対応が難しかった業務範囲への自動化を検討できるアプローチです。2026年現在、両者を組み合わせた活用が中小企業でも広がっています。
「RPAを導入したが、効果が出る業務と出ない業務がある」「生成AIを使い始めたが、RPAとどう組み合わせればいいかわからない」——こうした疑問を持つ担当者が増えています。
近年はRPA単体ではなく、AIやOCRなどの先端技術と組み合わせた活用も増えており、RPAは業務改革を支える基盤技術として位置づけられつつあります。
ITトレンドが独自に行った調査によると、2024年10月〜2025年4月の半年間でRPAツールの資料を請求した企業のうち、従業員規模別では「100名以上200名未満」の中規模企業が最も多く17.37%、次いで「10名未満」の小規模企業が15.02%を占めており、資料請求ユーザーのうち約半数以上が中小企業でした。
ただし「資料請求=導入済み」ではなく、中小企業でRPAに関心を持つ企業が増えているという傾向として参考にしてください。本記事では、RPAと生成AIの役割の違い・組み合わせ方・自動化を定着させるための進め方を解説します。
目次
- RPAと生成AIはなぜ組み合わせると効果的なのか
- RPA・生成AI・AIエージェントの役割分担
- 組み合わせ活用のイメージ(業務別)
- 業務自動化を定着させるための進め方
- 中小企業が自動化に取り組む際のポイント
- 自動化推進を外部に支援してもらう選択肢
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
1. RPAと生成AIはなぜ組み合わせると効果的なのか
それぞれの得意領域
RPAと生成AIはそれぞれ異なる得意領域を持ちます。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
- 画面上の定型操作を設定されたルールに従って自動実行
- 複数システム間のデータ入力・転記・集計
- APIが存在しないレガシーシステムへのアクセス
生成AI(大規模言語モデルを活用したサービス)
- テキストの理解・要約・分類・生成・翻訳の補助
- メール・報告書・議事録などの文書処理補助
- 定型ルールだけでは処理しにくい入力への対応補助
組み合わせることで広がる自動化の可能性
RPAだけでは「テキストを読んで判断する」業務への対応に限界があり、生成AIだけでは「画面を操作してシステムに入力する」ことはできません。両者を組み合わせることで、「読む→判断を補助する→入力する」という一連の業務フローへの自動化対応の可能性が広がります。
例えば「受信メールの内容を読み取り分類する(生成AI)→該当するシステムに転記する(RPA)」という流れがその一例です。ただし実際の効果は業務内容・ツール構成・運用方法によって異なります。
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2. RPA・生成AI・AIエージェントの役割分担
2026年現在の自動化ツールの役割を整理します。
| 技術 | 主な役割 | 得意な業務例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| RPA | 画面操作・データ転記の自動実行 | データ入力・定期レポート作成・システム間連携 | 業務フローや画面の変更でシナリオ修正が必要になる場合がある |
| 生成AI | テキスト理解・生成・要約・分類の補助 | メール処理補助・議事録作成補助・マニュアル作成補助 | 出力内容は必ずファクトチェックが必要。誤情報を生成する場合がある |
| AIエージェント | 目標に基づく複数ステップの処理遂行 | 複数ツールを連携したフローの自動化 | 2026年現在も発展途上。人による監督・承認体制が重要 |
| AI-OCR・文書解析 | 紙・PDFのデータ化補助 | 請求書・領収書・申請書の内容抽出補助 | 精度は文書の種類・品質によって異なる |
| ノーコード自動化ツール | API連携・トリガー型ワークフロー | 複数SaaSサービス間の自動連携 | APIが存在するサービスに限られる |
AIは「判断・文章生成・非定型」、RPAは「画面操作・定型反復・正確性」が得意という役割分担をベースに、業務タイプ別に使い分けることが費用対効果を高める上で重要とされています。
3. 組み合わせ活用のイメージ(業務別)
以下はあくまで活用のイメージです。実際の効果・適性は業務内容・利用ツール・運用方法によって大きく異なります。
バックオフィス業務
| 業務 | 自動化の組み合わせ例(イメージ) |
|---|---|
| 請求書処理 | AI-OCRで請求書を読み取り→RPAで会計システムへ転記 |
| 経費精算確認 | 生成AIで領収書の内容を分類・整理補助→RPAで管理システムへ登録補助 |
| 定期レポート作成 | RPAで各システムからデータ収集→生成AIでレポート文章の下書き生成補助 |
顧客対応業務
| 業務 | 自動化の組み合わせ例(イメージ) |
|---|---|
| メール一次対応 | 生成AIでメール内容を分類・返信案を生成補助→担当者が確認・送信 |
| 問い合わせ記録 | 生成AIで問い合わせ内容を要約補助→RPAでCRMシステムへ登録 |
人事・採用業務
| 業務 | 自動化の組み合わせ例(イメージ) |
|---|---|
| 勤怠データ集計 | RPAで勤怠システムからデータ収集→集計処理 |
| 求人票・書類作成補助 | 生成AIで文章の下書きを作成補助→担当者が確認・修正 |
4. 業務自動化を定着させるための進め方
業務自動化は「ツールを導入すれば完了」ではなく、定着・継続的な改善が必要です。
ステップ1:対象業務の選定と整理
自動化に適している業務の特徴として以下が挙げられます。
- 繰り返し発生する定型的・反復的な業務
- 処理量が多く、担当者の工数を圧迫している
- ルールが明確で標準化しやすい
- 人的ミスが発生しやすい
業務フローを図式化し、「RPAが担える部分」「生成AIが担える部分」「人間が引き続き担うべき部分」を整理することが重要です。
ステップ2:試験導入と効果検証
対象業務を1〜2つに絞って試験導入し、導入前後の処理時間・エラー率・担当者の工数などを記録します。効果を確認してから他の業務へ展開するアプローチが失敗リスクを下げます。
ステップ3:利用ルールの整備
特に生成AIを業務に組み込む場合は、以下のようなルールを整備することが推奨されます。
- 機密情報・個人情報のAIへの入力可否の基準
- AI生成物のファクトチェック体制(生成AIは誤情報を出力する場合がある)
- 著作権・知的財産への対応方針
- 利用するサービスのデータポリシーの確認
ステップ4:社内への展開と継続改善
試験導入で成果が確認できたら、他の業務・他の部門への展開を検討します。RPAはシステムの画面変更で修正が必要になる場合があるため、定期的なメンテナンス体制を整えておくことも重要です。KPIを設定して継続的に効果を測定・改善するサイクルを設けることで、自動化の価値を維持しやすくなります。
5. 中小企業が自動化に取り組む際のポイント
スモールスタートが重要
近年では、パソコン1台から低コストで導入できるタイプやノーコードで構築が可能なタイプも登場しています。さらにクラウド型のRPAツールであれば、導入・設計が簡単なだけでなく保守運用もベンダーに一任することが可能です。
リソースが限られている中小企業では、最初から大規模な自動化を目指すより、1つの業務に絞って始め、効果を確認しながら展開するアプローチが失敗リスクを下げます。
費用対効果の試算
自動化を検討する際は、以下を事前に整理することが重要です。
- 対象業務の現在の月間作業時間・担当者人数
- 導入ツールのライセンス費用・開発費・保守費用
- 効果測定のための基準値(Before)の記録
補助金については、IT導入補助金・ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金など、条件を満たす場合に活用できる制度があります。ただし補助金の要件・対象・公募時期は変動するため、最新情報は各制度の公式サイトおよび中小企業庁のサイト(https://www.chusho.meti.go.jp)でご確認ください(執筆時点:2026年7月)。
属人化を防ぐ
RPA・AI活用のノウハウが特定の担当者に集中すると、担当者不在時に業務が止まるリスクがあります。業務フローの文書化・引継ぎ体制の整備を、自動化と並行して進めることが重要です。
6. 自動化推進を外部に支援してもらう選択肢
RPA・AI活用の自動化を進める際に、社内リソースや専門知識が不足している場合は、外部の専門家による支援を活用する方法があります。
外部支援の主な形態
| 支援の種類 | 内容 |
|---|---|
| RPAツールベンダーのサポート | 導入・設定・シナリオ作成支援。多くのベンダーが提供 |
| BPO事業者によるRPA活用代行 | RPAやAIを活用した業務代行。自社でシステムを管理する必要がない |
| DX・IT導入コンサルタント | 業務整理からツール選定・導入まで支援 |
| AI活用の伴走型支援 | AI導入・定着まで継続的にサポートする形態 |
BPO事業者がRPAやAIを活用して業務を代行するサービスも提供されています。社内にRPA・AI活用のノウハウや担当者リソースがない場合、「自社でツールを導入・管理する」ではなく「RPAやAIを活用しているBPO事業者に委託する」という選択肢も考えられます。
ただし外部支援を利用する場合も、対象業務の整理・利用ルールの設計・効果測定の仕組みは企業側で準備しておくことが重要です。また支援に依存しすぎず、社内にノウハウが蓄積される形で進めることが長期的には重要です。
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7. よくある質問(FAQ)
Q. RPAと生成AIはどちらから始めればよいですか?
A. 業務の性質によって異なります。画面操作・データ転記など定型作業が多い場合はRPAから、メール処理・文書作成・議事録作成など文章を扱う業務が多い場合は生成AIから試すことが考えられます。まずは1業務から小さく試すことが重要です。どちらから始めるかより「どの業務から始めるか」を先に整理することが重要です。
Q. RPA導入で失敗しないためのポイントは何ですか?
A. 主に3点あります。①業務フローを事前に整理し、自動化に適しているかを確認する②システムの画面変更に備えたメンテナンス体制を設計する③特定担当者への属人化を防ぐための引継ぎ体制を整備する、です。
Q. 生成AIの出力は業務でそのまま使えますか?
A. そのまま使うことは推奨されません。生成AIは事実と異なる情報を生成する(ハルシネーション)場合があります。業務で使用する際は必ず人間がファクトチェックを行う体制を設けることが重要です。
Q. 中小企業でRPA・AI活用を進める際、最初に何をすれば良いですか?
A. まず対象とする業務を1つ選んで、その業務の現状フロー・処理時間・課題を整理することから始めましょう。業務が整理できてから、RPAが適しているか・生成AIが適しているかを判断する順序が効果的です。
Q. RPAとBPOはどう使い分ければよいですか?
A. 自社内でRPAを導入・運用するリソースがある場合はRPA自社導入が選択肢になります。一方、ツールの選定・開発・保守を担う人材が確保できない場合は、RPAを活用したBPO事業者に委託することで同様の効果を得られる場合があります。BPOとRPAはどちらかを選ぶものではなく、状況に応じて組み合わせることも可能です。
まとめ
RPAと生成AIを組み合わせた業務自動化のポイントを整理すると以下の通りです。
- 役割分担の基本:RPAは定型的な画面操作・データ処理、生成AIはテキスト理解・生成・分類の補助を担う
- 組み合わせの可能性:「読む→判断を補助する→入力する」という一連のフローへの自動化対応の可能性が広がる(効果は業務・ツール・運用方法による)
- 定着のために必要なこと:業務の可視化・試験導入・利用ルール整備・継続的な効果測定というサイクルが重要
- 中小企業の現実的な進め方:1業務から小さく始め、効果を確認してから展開する
業務自動化は「ツールを導入して終わり」ではありません。業務の整理・利用ルールの整備・定着・継続改善を含めたトータルな取り組みとして進めることが、投資対効果を高める上で重要です。
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